産経新聞によると、
政府が6月上旬にまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」に、全国民に毎年の歯科健診を義務付ける「国民皆歯科健診」の導入に向け、検討を始めるそうです。歯の健康を維持して他の病気の誘発も抑え、医療費全体を抑制する狙いがある。政府・自民党では令和7年頃の導入を目指す。
65歳以上の高齢者は、自身の歯を多く残す人ほど健康を維持しやすく、入院回数が少ないことが明らかになっている。逆に歯周病などを放置すれば糖尿病の合併症など大きな病気につながる可能性も指摘されている。厚生労働省は日本歯科医師会(日歯)とともに、80歳で自らの歯を20本残す「8020運動」などを進めてきた。
歯を多く残すには、歯周病などの早期発見と治療が重要になる。ただ、国内では歯科健診の受診率が低い。義務化しているのは1歳半と3歳の乳幼児、就学時や小中高生の学校健診、歯に有害なガスを業務で扱う人などに限られる。
全国の約7割の自治体では、40歳から10年に1度、健康増進法に基づく歯周病対策の検診なども実施しているが、受診率は1割にも満たない。
そこで、自民党では日歯の要望も受けてプロジェクトチームを立ち上げ、医療費全体の抑制効果も考慮し、皆健診制度の検討を進めてきた。
具体的な手法としては、健保組合などが毎年行う健康診断の際に唾液を提出してもらい、歯周病などの可能性がある人を受診につなげる案が浮上している。自民には、来年にも導入までの具体的なスケジュールを記した議員立法を制定する動きがある。(産経新聞NEWS 5/29より)
皆さん、言うまでもなく、歯の健康・大事さはご存知のことと思います。
体力的にも、精神的にも、脳(認知機能)にとっても、歯が丈夫でしっかり食べれるというのは、とても大事なことです。
特に、虫歯や歯周病を放っておくと、口の中の細菌により、脳血管障害、心筋梗塞、糖尿病、肺炎や早産のリスクが高くなってしまいます。
歯が痛くなってからや歯ぐきから出血したり、歯がグラグラしてからでは遅いので、大人もカラダの健康診断のように、
歯も普段からケアしておきましょう。ということです。
歯とともに大事なのが、唾液です。
唾液が主な担う役割として、
- 口内洗浄作用
- 口内のpH値を整える
- 抗菌作用
- 歯の再石灰化を促す
- 歯や粘膜の保護作用
- 粘膜修復作用・胃酸抑制
- 嚥下補助作用
- 消化を助ける
- 味覚を助ける
- がんを抑制する
- 不安を抑える
など、たくさんの役割を果たしてくれています。
せっかく歯が丈夫でも、口内の環境が悪いと細菌やウイルスなどが増殖して、
歯や歯ぐき、粘膜がおかされてしまいます。
次に、唾液の分泌、量についてです。
食物が口の中に入ると、咀嚼(そしゃく=かむこと)運動とともに、唾液の分泌が始まります。
唾液が作られるところは、唾液腺(だえきせん)と呼ばれます。耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)という大きな唾液腺と、口腔粘膜のあちこちに小さな分泌腺が分布しています。
食事の際に、これらの唾液腺から唾液が分泌される仕組みは、口の中に入った食物等から溶けだした化学物質によって、舌の粘膜が刺激を受けること、口腔内で一定の食物感覚を得ることによって、これらを知覚する神経が刺激され、それが脳へと伝達される結果、唾液が分泌されます。
この過程の中で、自律神経の働きが重要です。
唾液腺の種類によって、作られる唾液の性質が違いますが、作用する自律神経の働きかたによっても、分泌される唾液の性質が違います。すなわち、交感神経が刺激されると粘っこい唾液(緊張して口が乾くとネバネバするでしょう)。副交感神経が刺激されると、さらさらした唾液が多く出ます(居眠りをしててよだれがダラ~という経験あるでしょう)。
その他に、唾液の作用の注目すべき点は。
特別な刺激がなくても絶えず分泌される固有唾液と、食物による刺激・顎の運動・味覚などによって分泌される反射唾液というものがあるのです。
生理的な原因によって唾液分泌が少なくなる場合
唾液を作り、分泌する唾液腺は、自律神経の影響を受けます。たとえば、緊張した時や、不安を感じた時、怒りを感じたとき等には交感神経が優位になっているため、唾液の分泌量は減少します。
また、なんらかの原因で脱水状態になったとき、体からの水分の喪失を防ぐために、唾液の分泌は減ります。年をとると、その他のあらゆる部分と同じように、唾液腺の分泌機能も衰えていくため、一般に老人では口腔内が乾燥しやすくなります。女性の場合は、閉経に伴い、ホルモン等の関係で口腔内乾燥が起こります。
耳鼻科の病気や内科の病気で薬を服用している場合、その薬の多くは唾液の分泌を抑制する作用を持っています。
・病的な原因によって唾液分泌が少なくなる場合
炎症や腫瘍を含む唾液腺の病気、唾液腺の機能に異常を引き起こす全身的な病気に罹ったとき、などは、唾液の分泌量が減少します。また、唾液腺の付近に、治療のための放射線照射を受けた場合には、唾液腺が萎縮を起こし、唾液分泌機能が衰えます。
唾液腺の病気、または唾液の分泌を減少させる病気を幾つか挙げてみます。
<慢性だ液腺炎>
唾液腺が、数ヶ月から数年かかって、痛みを感じないままに腫脹し、硬くなってくるものです。自覚症状がないために、なかなか気づかれません。
<シェーグレン症候群>
唾液腺だけではなく、目(乾性結膜炎)と、関節(慢性関節リウマチ)にも症状が出る、全身性疾患です。全身の、外分泌機能が障害されます。
<自律神経失調症>
自律神経の機能に障害を起こしたもので、その内容と程度によって、交換神経緊張症と、副交感神経緊張症とに分けられます。また、全機能が障害された状態を全自律神経失調症とよびます。
消化器系では、食欲不振や胃の不快感などとともに、唾液の分泌が減少することにより、口の中が乾く、という症状が起こりますが、障害を起こす神経によっては逆に分泌量が増えてしまうこともあります。また、便秘や下痢も起こります。
<甲状腺機能障害>
甲状腺の機能が乱れると、全身に様々な症状が発生します。そういう患者さんの場合、口の中が乾燥しやすくなります。口の中ばかりでなく、目や皮膚も乾燥します。
このような症状は、甲状腺機能亢進症の場合が多いのですが、口の中が乾燥するからといってうがい薬(イソジン)を使用する場合、甲状腺にヨードが蓄積してしまうので、非常に危険です。
通常、唾液分泌が唾液性疾患などの理由で、出ない人には、対症療法として「人工唾液」を用いますが、通常の唾液分泌機能に障害がない場合は、用いません。
長くなりましたが、結局のところ、歯を丈夫に保つため、歯槽膿漏や歯肉炎を防ぐために定期的な歯の検診、
口腔ケアは大切ですが、肝心の唾液の分泌が悪くては元も子もありません。
今回の新型コロナ感染症によって、常に口の中では細菌やウイルスが潜んでいることも感じたことと思います。
ですから、なるべく自律神経の乱れを整え、日頃から唾液の分泌を保っておく必要があります。
毎日、お薬を服用している方はなおさらです。
「はり灸」の施術は、自律神経に働きかけます。「病気になってからでは遅い。」元気に過ごすために!
「歯のケアは、歯医者さんへ。自律神経のケアはぜひはり灸で。」
院 長